はじめに
2026年3月31日、ユニリーバがヘルマンズやクノールを抱える食品事業(Foods)を、米スパイス大手のマコーミックと統合すると発表しました。2025年12月にアイスクリーム事業(マグナム)を切り離したばかりで、立て続けの大型再編です。これが片付けば、ユニリーバはビューティ、パーソナルケア、ホームケアだけの会社(HPC専業)になります。
私もユニリーバ株を持っているので、他人事ではありません。株主の手元で起きることは単純で、ユニリーバ株はそのまま残り、そこにマコーミック株が上乗せで配られます。ただ、何株もらえるのか、日本の口座でどう処理されるのか、税金はどうなるのかといった肝心なところは、10月2日時点でまだ公表されていません。
この記事では、今わかっていることと、わかっていないことを分けて書いておきます。先に私のスタンスを言っておくと、ユニリーバ本体はこのまま持ち続けるつもりです。マコーミック株は、受け取ってから持つか売るかを決めればいいと思っています。前もって慌てて売る理由は、今のところ見当たりません。
むしろ、現在割安なマコーミック株を新規獲得しても良いのでは?と考えてます。
1. ディールの中身
まず条件を表にまとめます(2026年3月31日の両社リリースより)。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | ユニリーバFoods(インド・ネパール・ポルトガルの食品事業、ライフスタイル栄養、Buavita、リプトンRTDは対象外) |
| 企業価値(EV) | 約448億ドル |
| 評価倍率 | EV/EBITDA 13.8倍、EV/売上高 3.6倍(2025年実績) |
| 現金対価 | 157億ドル(クロージング時に調整あり) |
| 株式対価 | 統合後マコーミックの完全希薄化後株式の65.0%(1か月VWAP 57.84ドル換算で約291億ドル) |
| スキーム | リバース・モリス・トラスト(RMT)。米国連邦所得税上、ユニリーバと株主には非課税の想定 |
| マコーミック側の評価 | EV約210億ドル。両社とも同じ13.8倍で評価 |
| 完了予定 | 2027年半ば。マコーミック株主の承認と各国の独禁法審査が条件で、ユニリーバ株主の投票はなし |
| つなぎ融資 | シティ、ゴールドマン・サックス、モルガン・スタンレーから157億ドル |
完了時の持分はこうなります。
| 株主 | 持分 |
|---|---|
| ユニリーバ株主(分配分) | 55.1% |
| マコーミック既存株主 | 35.0% |
| ユニリーバ本体(DutchCo経由) | 9.9% |
仕組みはマコーミックの8-Kに書かれています。ユニリーバの食品持株会社(SpinCo、Sandman Corporation)の株式のうち84.77%を、ユニリーバ株主に「現物による中間配当(interim dividend in specie)」として持株数に応じて配り、残り15.23%はユニリーバ側が持ち続けます。その直後にSpinCoがマコーミックと合併して、SpinCo株はマコーミック株に置き換わります。ユニリーバが全株を配ることを選べば、ユニリーバ株主の持分は約65%になります。
統合後のマコーミックは、2025年売上ベースで次の4セグメント、合計約200億ドルの会社になる予定です(2026年7月23日発表)。
| 新セグメント | 2025年売上高 |
|---|---|
| Americas Consumer | 約80億ドル |
| International Consumer | 約70億ドル |
| Global Food Service | 約40億ドル |
| Global Flavor | 約25億ドル |
ユニリーバFoodsの売上の約7割はヘルマンズとクノールの2ブランドです。マコーミックの説明では、新興国売上の比率は約25%から40%超に上がります(9月9日のBarclays会議)。
2. 株主は何をもらえるのか
ユニリーバ株の株数は変わりません。そこに、議決権付きと無議決権の普通株を決められた割合で組み合わせたマコーミック株が加わります。NYSEで主に取引されているのは無議決権株(MKC)で、議決権株はMKC.Vです。現金157億ドルはユニリーバ本体に入るお金で、株主に配られるわけではありません。
分配比率はまだ出ていません。 比率はマコーミックのS-4(委任状説明書兼目論見書)とSpinCoのForm 10で開示される予定ですが、9月9日付の開示でもまだ「提出予定」のままで、私が調べた範囲では提出を確認できていません。
待っていても仕方ないので、公開されている数字からざっくり計算してみました。あくまで私の試算です。
- マコーミックの発行済株式数は2026年8月31日時点で約2.69億株(議決権株1,452万株+無議決権株2億5,454万株、10-Qより)
- これが完了後に35%になるので、総株数は約7.69億株。55.1%にあたる約4.24億株がユニリーバ株主に配られる
- ユニリーバの発行済株式数は、2026年5月13日時点で自己株式を除き2,179,673,982株(約21.8億株、RNSより)
- 割り算すると、ユニリーバ1株につきマコーミック約0.19株。だいたい5株に1株
MKCの直近株価46.40ドルで計算すると、ユニリーバ1株あたり約9ドル分です。ユニリーバADR(UL)の株価約62ドルに対して15%前後になります。希薄化の調整や自社株買いでユニリーバの株数が減れば、この数字も動きます。確定値はS-4とForm 10が出てから確認してください。
上場先については、マコーミックが7月23日に二次上場先をロンドン証券取引所に決めたと発表しています(国際本社はオランダ)。ロンドンのユニリーバ株を持つ人はロンドンで、ADRを持つ人はNYSEで受け取る形になりそうですが、具体的な受け渡し方法はまだ出ていません。
日本の証券口座ではどうなるか
ここはマグナム分離のときの実例が参考になります。
野村證券では、ユニリーバADR 5株につきマグナム1株(NYSE上場株)が交付されました。現地の権利落ち日は2025年12月8日、株式併合の権利落ち日は12月9日で、オンラインでのADR売却注文は10月17日から止まっていました。
大和証券は、受け取ったマグナム株を「特定口座外」で管理すると案内していました。同時に行われたADRの9株→8株の併合(12月9日効力発生)の端数処理は「追って案内」とされていました。
楽天証券は、米国株のスピンオフは一般口座に払い出してから処理するのが原則で、1株未満の端数は売却して現金で渡しています。実際にユニリーバを持っていた個人の方のブログ(2026年2月)を読むと、ユニリーバとマグナムの両方が一般口座に移り、取得価額が0円と表示されたこと、「特定口座払出通知書」を使って確定申告したことが書かれていました。
SBI証券は一般ルールとして、スピンオフで交付される子会社株は一般口座に入り、親会社株は取得価額を調整して特定口座に残せる場合がある、としています。マネックス証券は、子会社株は一般口座に入り、配当所得とされる場合は交付時に源泉徴収すると案内しています。
こうして並べると、今回もマコーミック株は一般口座に入り、端数は現金化される可能性が高そうです。証券会社によっては、ユニリーバ株ごと一般口座に移されることもありえます。
税金の扱いはまだわからない
米国の連邦所得税では非課税の想定ですが、日本でどう扱われるか(課税が繰り延べられるのか、みなし配当として課税されるのか)は公表されていません。
個人的に気になっているのは、英国での法的な形式が「現物による中間配当」になっている点です。証券会社が配当所得として源泉徴収してくる可能性は頭に入れておいたほうがいいと思います。
今のうちにできることは、分配前後の取引報告書と「特定口座払出通知書」をきちんと保存しておくこと、取得価額の按分方法をユニリーバが公表するかどうかを確認すること、必要なら税理士や税務署に相談することくらいです。NISAで持っている場合は扱いが違うかもしれないので、証券会社に聞いておくのが確実です。
3. 新しいユニリーバ(HPC専業)をどう見るか
足元の業績
7月28日に出た2026年上期決算はかなり良い内容でした。
| 指標 | 2026年上期 |
|---|---|
| 基礎売上成長率(USG) | 4.8%(数量4.2%、価格0.6%) |
| 第2四半期USG | 5.8%(数量5.5%。経営陣いわく2010年以来最も数量主導の四半期) |
| HPC 第2四半期USG | 7.6%(数量7.4%) |
| 部門別上期USG | Beauty & Wellbeing 5.9% / Personal Care 4.8% / Home Care 7.6% / Foods 1.2% |
| 基礎営業利益率 | 20.3%(前年比+10bp) |
| 売上高 | 256億ユーロ |
| 通期ガイダンス | USG 4〜6%(数量は約3%に上方修正)、基礎営業利益率は2025年の20.0%から小幅改善 |
部門別で見ると、Foodsだけが1.2%と低く、全社の成長率を押し下げていました。Foodsが抜ければ、残るHPCの成長率はそれだけで見栄えが良くなります。会社によれば、HPCの過去3年の平均USGは5.4%、数量成長は2.5%です。
フェルナンデスCEOの路線
フェルナンド・フェルナンデス氏がCEOに就いたのは2025年3月です。アイスクリームの分離、8億ユーロの生産性プログラム(2026年上期に前倒しで完了)、そして今回のFoods分離と、ブランド数を絞って大きなブランドに集中する方向で一貫しています。本人は6月の業界イベントで、四半期ごとに結果を出していけば、マコーミックとの取引完了が近づくにつれて価値は自然と示される、という趣旨の話をしていました。
157億ドルの使い道
経営陣が示している優先順位は、分離や税金の一時コストの穴埋めが先で、次にネット負債/EBITDAを約2.0倍まで下げること、最後が株主還元です。
自社株買いは2026〜2029年で総額60億ユーロ。そのうち15億ユーロ分は2026年6月に終わっていて、30,703,780株を総額1,499,999,891ユーロで買っています(6月5日のRNS)。配当性向は約60%を維持し、年15億ユーロ規模のボルトオン買収も続ける方針です。
一方で、分離後に宙に浮く間接費(ストランデッドコスト)が4〜5億ユーロ出る見込みで、これを2027〜2029年に削っていく計画です。そのためのリストラ費用は約5億ユーロと見られています。
バリュエーション
ロイターが8月25日に配信したLSEGデータでは、EV/コア利益で比べるとユニリーバの安さが目立ちます。
| 企業 | EV/コア利益 |
|---|---|
| ユニリーバ | 11.5倍 |
| P&G | 14.8倍 |
| ロレアル | 17.5倍 |
| コカ・コーラ(参考) | 22.7倍 |
コルゲートは同じ条件のデータが見つからなかったので外しています。
株価はロンドンで4,664.5ペンス(9月25日)、52週レンジは3,644〜5,526ペンスです。バーンスタインは9月16日に「買い」、目標株価5,800ペンスとしています。ADR(UL)は9月11日時点で62.01ドル、MarketBeat集計のコンセンサスは「Hold」、目標株価65.55ドルです。
P&Gが食品から手を引いたあと、10年近くプレミアム評価を保ってきたことは市場も意識しているはずです。Ninety Oneのダン・ハンベリー氏は、評価が変わるには3〜4四半期続けて強い数量成長を見せる必要があると話していました。足元の数字はその条件を満たしつつあるので、今のディスカウントは事業の中身というより、オーバーハング(将来の売り圧力への警戒)とディールの複雑さによるものだと私は見ています。
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配当はどうなるか
今の四半期配当は0.4664ユーロ(前年比+3%)、年換算で約1.87ユーロです。Foods分の利益が抜けたあとの1株配当がどうなるかは、まだ示されていません。配当性向60%を守るなら、分離後に1株配当が下がる可能性はあります。もっとも、受け取るマコーミック株の配当と、自社株買いによる株数減少で、ある程度は埋め合わされるはずです。
4. 統合後のマコーミックをどう見るか
会社が示している数字
統合後の営業利益率はシナジー前で約21%と、マコーミック単体(約17%)より高くなります。
コストシナジーは成長投資などを差し引いた純額で6億ドル。3分の2を2年目までに出す計画です。内訳はSG&Aが約5割、調達が約4割(約2.4億ドル)、製造・物流が約1割。上位100社のサプライヤーのうち約半分が両社で重なっているそうです(9月9日のBarclays会議)。
3年目には売上成長3〜5%、初年度から調整後EPSと営業利益率が上がる見込みとしています。フードサービスでは、Unilever Food Solutionsが展開する75か国のうち51か国で、マコーミックのフードサービス事業はほとんど、あるいはまったく存在しません。ここは素直に補完関係があると思います。
TSA(移行期間のサービス契約)は最長24か月で、段階的に終わらせていきます。Foods売上の約8割はすでに独立した組織で動いていて、クロージングの2〜3か月前には100%になる予定です。統合責任者はアンドリュー・ファウスト氏です。
借金の水準
完了時のネットレバレッジは4.0倍以下で、2年かけて約3.0倍まで下げる計画です。2年目までに15〜20億ドルを返済に回せる見込みとしています。マコーミック単体のレバレッジは2026年第3四半期末で約2.9倍です。
配当性向は約60%を維持し、連続増配の記録も守ると言っています。直近の四半期配当は0.48ドル(前年同期0.45ドル)です。
第3四半期決算(10月1日)
調整後EPSは0.86ドル(予想0.76ドル)、売上高は20.2億ドル(予想19.8億ドル)と、どちらも予想を上回りました。
ただ中身を見ると、オーガニック成長は1.9%(価格+2.2%、数量・ミックス−0.3%)にとどまっています。米国の消費者向けは値上げ分を数量減が打ち消して横ばいでした。包装資材の不足で、通期のオーガニック成長が約30bp押し下げられる見込みです。統合関連の費用は9か月で1億7,120万ドルに膨らんでいます。
アナリストと株価
TDコーエンのロバート・モスコウ氏は9月14日、投資判断を「買い」から「Hold」に下げ、目標株価を60ドルから55ドルに引き下げました。Investing.comによると、決算前の時点でカバーしている15人のうち買いが7人、Holdが8人、売りはゼロ。平均目標株価は60.08ドルでした。
株価は9月30日の終値で46.40ドル、52週レンジは44.82〜72.41ドルです。取引条件の基準になったVWAP 57.84ドルを2割ほど下回っています。ユニリーバ株主に配られるマコーミック株は、受け取った人がまとめて売りに出やすい性質のものなので、この点は覚悟しておいたほうがいいでしょう。
クラフト・ハインツの二の舞にならないか
食品の大型合併と聞くと、2015年のクラフト・ハインツを思い出す人は多いと思います。コスト削減を優先しすぎてブランドへの投資が細り、最後は巨額の減損に追い込まれました。
今回は、シナジーが成長投資を差し引いた純額で示されていること、両社とも広告・ブランド投資が食品の同業より多いことなど、違う点もあります。
それでも不安はあります。統合する規模はマコーミック単体の約2倍で、同社にとって過去最大の統合です。新興国の比率が上がれば為替の影響も大きくなります。テリー・スミス氏は2024年の時点で、マコーミックの経営陣と資本効率を評価していないとして同社株を売っていました。
5. 株主としてどうするか
選択肢は大きく4つあると思います。
| 選択肢 | 良い点 | 気をつける点 |
|---|---|---|
| A. 両方持ち続ける | 手間が一番少ない。シナジーとHPCの再評価の両方を取りにいける | マコーミックの統合リスクと米国食品株へのエクスポージャーが残る |
| B. ユニリーバは持ち、マコーミックは受け取ったあと売る | HPC専業として持ち続けられる | 受け取り直後は売りが集中して安くなりやすい。一般口座での売却なので確定申告が必要 |
| C. 分配前にユニリーバを売る | 税務や手続きの面倒を避けられる | 割安な水準で手放すことになる。含み益があれば課税される。その後の上昇も取れない |
| D. 分配前に買い増す | 売り圧力で押し下げられた価格で、HPCとマコーミックをまとめて買える | 規制審査、税務の不透明さ、完了までの時間リスクを抱える |
私がどれにするか考えるときに見ているのは、次のあたりです。
まず、米国の食品株を自分のポートフォリオに入れたいかどうか。マコーミックはスパイスと調味料で利益率の高い会社ですが、配当利回りや成長の性格はユニリーバのHPCとはだいぶ違います。
次に、売るタイミング。マグナムのときは、HPCや欧州の配当株を投資対象にしているファンドが上場直後に売ってきて、株価が伸びませんでした。今回はユニリーバ株主がマコーミックの過半を持つことになるので、受け取ってすぐ売ると一番安いところで売ってしまうおそれがあります。
それから配当。試算の0.19株にマコーミックの年配当1.92ドルを掛けると、ユニリーバ1株あたり年0.37ドルほどのマコーミック配当が増えます。ユニリーバ本体の配当がどれだけ下がるかと合わせて、比率と新しい配当方針が出たら計算し直すつもりです。
最後に、税務の手間をどこまで許容できるか。一般口座への払い出しや取得価額0円の表示など、マグナムのときと同じ面倒はまた来ると思っておいたほうがいいです。
6. スケジュールとリスク
| 時期 | 出来事 | 状況 |
|---|---|---|
| 2026年3月31日 | 統合を発表 | 済 |
| 2026年6月 | 15億ユーロの自社株買いが完了 | 済 |
| 2026年7月21日〜8月5日 | 英CMAが意見募集 | 済 |
| 2026年7月23日 | 新組織・経営陣・ロンドン二次上場を発表 | 済 |
| 2026年8月 | コールマンズ(マスタード)の売却手続き開始。ロスチャイルドが買い手候補に打診とSky Newsが報道 | 進行中 |
| 2026年9月9日 | シナジーとTSAの詳細を公表(Barclays会議) | 済 |
| 2026年9月16日 | CMAがPhase 1審査を正式に開始 | 進行中 |
| 2026年10月1日 | マコーミック第3四半期決算。規制当局への申請は予定どおりと説明 | 済 |
| 2026年11月11日 | CMA Phase 1の判断期限(Phase 2に進むかどうか) | 予定 |
| 未定 | S-4/Form 10の提出、分配比率の開示、マコーミック株主総会 | 未公表 |
| 未定 | 米HSRの待機期間満了、中国など他国の承認 | 未公表(中国は簡易審査で申請予定と報道) |
| 2027年半ば | クロージング | 予定どおり |
| クロージングの1年後以降 | ユニリーバ保有の9.9%を段階的に売却 | 予定 |
コールマンズについては、ユニリーバ広報が「競争上の懸念に先回りして対処するため、ブランドと資産を買い手候補に売り込むことにした」と説明しています(Just Food、9月16日)。
リスクとして意識しているのは次の点です。
規制。 CMAがPhase 2に進めば遅れる可能性があります。マコーミックは問題解消のため、2025年売上で最大14億ドル規模までの事業売却を受け入れることに合意しています(8-K/A)。重なるのはマヨネーズ(ヘルマンズとマコーミックブランド)やマスタードです。
税務。 米国の非課税要件が崩れるリスクがあり、日本での課税関係もはっきりしていません。
統合とTSA。 移行期間中はコストが二重にかかり、現場が混乱するおそれもあります。
需給。 ユニリーバ株とマコーミック株の両方に売り圧力がかかります。ユニリーバが持つ9.9%の売却も、いずれ重しになります。
株主の反発。 ファンドスミスのテリー・スミス氏はユニリーバ株を全部売り、「アクティビストに押されて分割に走り、事業運営への集中を投げ出した」と批判しました。ユニリーバ株主の投票なしで進むことへの不満も出ています。
労務。 ユニリーバが欧州域外の従業員の社会保障を縮小する案を出したとの報道もあります(Zonebourse、9月)。
7. マグナム分離を振り返る
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 分離完了 | 2025年12月6日(取引開始は12月8日。アムステルダム主上場、ロンドン・NYにも上場) |
| 分配比率 | ユニリーバ5株につきマグナム1株 |
| 同時に実施 | ユニリーバ株の9株→8株の併合 |
| ユニリーバの残存持分 | 約19.9%(5年以内に売却予定) |
| 初日の時価総額 | 約79億ユーロ(事前の期待100億ユーロ超を下回る) |
| その後 | 2026年2月12日の初決算が不評で下落。5月にブラックストーンやCD&Rが関心と報じられ一時反発 |
マグナムを経験して思うのは、切り離された子会社の株は、上場直後に「うちの投資方針に合わない」という理由だけで売られやすいということです。だから今回も、受け取ったマコーミック株を急いで処分する必要はないと考えています。
最初の決算は分離コストで見栄えが悪くなりがちです。統合後マコーミックの最初の数四半期も、一時費用やTSAのコストで数字が荒れるつもりで見ておくのがいいと思います。
日本の口座での事務の面倒も、マグナムで実際に起きたことです。一般口座への払い出し、取得価額0円の表示、端数の現金化。今回も同じ準備をしておくべきです。
それと、マグナムを切り離したあともユニリーバの評価倍率はほとんど上がりませんでした。市場は再編そのものより、数量成長が続くかどうかを見ているのだと思います。
おわりに
ユニリーバ側から見れば、食品事業を同業並みの13.8倍で切り出し、現金157億ドルとマコーミック株の65%を手にする取引で、条件は悪くありません。
それでもユニリーバ株は発表後に約14%下がりました(Bloomberg Intelligenceのダイアナ・ゴメス氏、3月17日起点)。ディールの複雑さ、完了までの長さ、売り圧力への警戒が重なって、市場はまだ厳しい目で見ています。
私はユニリーバをこのまま持ち続け、マコーミック株は受け取ってから落ち着いて考えるつもりです。当面注目しているのは、11月11日のCMAの判断、S-4/Form 10で出てくる分配比率と税務情報、そしてマコーミックの株主総会の日程です。何か動きがあれば、この記事も更新します。
本記事は個人の見解をまとめたもので、特定銘柄の売買をすすめるものではありません。数字は2026年10月2日時点で確認できた公表情報と報道にもとづいており、試算を含みます。投資と税務の判断は、必要に応じて専門家に相談のうえ、ご自身で行ってください。
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